真贋判定のしくみ
どのようにして偽物ICを見分けるのか
X線検査
真贋判定の基本はX線検査です。基本的にはX線検査でICのパッケージの中身を透視してダイが入っているかどうかを確認したり、正規品のダイと大きさを比較したりして判断します。
空っぽのICや、重さ調整のために石や砂が入っている粗悪な偽造ICであれば容易に判別することができます。
しかしながら、ICの製造時期や製造した工場によってリードフレーム(ICの乗せている金属製の端子台)の形が変わることも考えられますので、X線検査だけで本物か偽物かの判断をすることは難しいでしょう。 同一メーカーの同一ファミリのICでは、同じダイを使用していることもあるため、X線検査だけで本物だと判断することはできません。そのため、一般的には外観検査や電気的検査とセットで使われます。
当社ではICの中身が入っているか、リードフレームやダイの大きさに明らかな異常がないかといった参考情報として、電気的検査の前に用います。

外観検査(光学検査)
外観検査は光学検査とも言われ、真贋判定の基本となる検査のひとつです。
具体的には顕微鏡でIC表面のシルク(マーキング)の文字を読み取り、メーカー正規品の規則を満たしているかどうかや、印字の品質、フォント、表面に削ったような跡がないかどうかなどを見るほか、端子を見て曲がっていたりしないかどうか、ピン間隔や寸法は正規品のものと一致するかどうかなどを確認します。
しかしながら、目の前にある1つのICが本物か偽物かを見分けることは難しく、ここでも正規品と比較することが必要になってきます。
また、正規品のICも作られた年代や工場によっては異なる外観を呈することがあるため、光学検査のみで正規品と判定することはリスクがあります。
当社では、電気的検査の前にX線検査とともに利用して、中古品か新品かの判断や、シルク(マーキング)の表示が正しいか、偽造されたようなマーキングになっていないか、パッケージ表面に削った痕やはんだ付けの痕、フラックスの痕がないかどうかなどを調べる手段として用います。

電気的検査
他社による従来の一般的な電気的検査方法は、カーブトレーサーなどの測定器を用いてどこかのピンとピンの間の電圧-電流特性を測るというものです。
当社の真贋判定での電気的検査は、それとは大きく異なります。 当社の電気的検査は、QFP64~BGA1764ピンまで標準的なICソケットを20種類ほど用意して検査対象ICをソケットに挿し、適正な電源やGNDを与えて実際に動作させます。そして、JTAGでIC内部のテスト回路に接続します。
JTAGで接続できた場合にはIDCODEを読み取り、バウンダリスキャンによって全端子を操作して入出力が可能かどうかを判断します。IDCODEの比較によって偽物ICは100%見分けることができ、X線や外観では検査しにくかった「同一メーカー」「同一ファミリ」内のマーキング偽装も発見できます。
JTAGで接続できない場合には、マーキングを書き換えた中身の違うICか、完全に故障しているICであると判断されます。
なお、比較用の正規品サンプルは必要ありません。

電気的検査の具体的手法
原理実証用試作機(max 240pin)
右の写真は当社の真贋判定装置の試作機のものです。
中央のICソケットに検査対象のターゲットICを装着し、ジャンパワイヤーでVCCやGNDを供給してICを動作させます。VCCは3.3V, 1.8V, 2.5V 1.2Vを選択することができます。
正しい電源を供給してICを起動したのち、JTAGで接続してIDCODEが読み取れるか、起動時の電圧-電流特性は正常か、バウンダリスキャンで端子が操作できるかどうかを検証することが可能です。
対応しているパッケージは、QFP100、QFP144、QFP208、QFP240の4種類です。
JTAGのIDCODEが正しく読み出せればマーキング書き換え偽装の可能性は低く、バウンダリスキャンによっても端子の入出力が正常にできるかどうかを診断できるので全ピンの健全性が確認できます。

実用化試験機 Type-A (max 360pin)
上の試作機はジャンパワイヤを手作業で接続しなおさなければならず、設定が非常に大変でした。
そのジャンパワイヤを電子的スイッチで置き換えたものが、左の写真の実用化試験機です。
この試験機では最大360ピンまでのICの任意の端子に、4種類のVCCとGND、AD変換、DA変換、それからJTAGを与えることができ、合計2880個の電子的なスイッチによって、1ピンあたり8種類のソースから選択して接続されます。
ソケットを乗せる基板は着脱式になっており、QFP64, QFP100, QFP144, QFP208, QFP240, CPG132, CPG196, CPG236, CLG225,BGA256, BGA324のICソケットを搭載した基板に乗せ換えることができます。
電源を与えられて動作するようになったターゲットICに対してJTAGで接続し、IDCODEの取得とバウンダリスキャンを実行します。

